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研究事例紹介1

当研究室では、前述のテーマに基づき様々な研究を展開しております。
ここでは、学生らによる近年の主な研究内容をご紹介致します。

個別研究1 メタン発酵消化液とその利用


水田への消化液施用1

 畜産廃棄物や食品廃棄物に代表される「有機性廃棄物」の処理方法の一つとして、嫌気発酵によってメタンガスを得る"メタン発酵処理"が近年注目されています。

 しかし、この処理方法における副生物のメタン発酵消化液(以降「消化液」と省略)の浄化処理に多額の費用がかかることが問題視されてきました。

 我々の研究室では、消化液が窒素,リン,カリの肥料三要素を含んでいること、消化液を農地へ還元することで地域における物質循環の向上が図れることに注目し、2002年より消化液を水田へ施用し、現在に至るまで7年間の長期試験を行ってきました。

 その中で、以下のような項目について化学肥料を施用した場合との比較調査を行っています。

・水稲の収量,玄米品質および土壌肥沃度の変化
・水稲による窒素吸収および土壌からの窒素無機化パターン
・温室効果ガス(メタン,亜酸化窒素)の発生量
・多収品種(多用途品種,飼料用品種など)の生育

水田への消化液施用2


 今後、消化液を施用した場合の耕地生態系における窒素収支モデルの作成や、窒素以外の元素収支の解明、さらには「耕畜連携」の一事例として、消化液を用いた実証試験などを行っていく予定です。



個別研究2 田畑輪換圃場におけるイネ・ムギ・ダイズの
     生産性評価


 日本のように、耕地面積が限られ、農家一戸あたりの営農規模が小さい地域では、食料の生産性を向上させるためには、新たな耕地の開発や大規模化(外面的規模拡大)ではなく、農耕地の高度利用(内面的規模拡大)を行っていく必要があります。農耕地の高度利用の一つである田畑輪換による水田多毛作体系では、生産性向上の他に、イネ栽培を組み込むことで、畑栽培における連作障害が回避される、特定の畑雑草種の専有が抑制される、表面土壌の流亡・浸食が抑制される、といった効果が期待されます。

 奈良県桜井市では、イネ-ムギ-ダイズの二年三作による作付け体系が、ブロックローテーションで行われている地区があります。集落営農として行われているこの地区において、イネ作、ムギ作、ダイズ作のそれぞれについて、ブロックごとの生産性の評価に取り組んでいます。リモートセンシングによる生育量などの推定精度の向上ならびにリモートセンシングを利用した生育量の把握や収量予測などを行っています。ダイズ作において、品質の安定ならびに多収を目指して、栽植密度の違いが収量、品質(タンパク質含有率など)に及ぼす影響について検討しています。



個別研究3 X線CT計測による出土米ブロックの調査


 奈良県をはじめ、わが国には多くの弥生時代水田跡の遺跡が発見され、発掘・調査されています。これらの遺跡より出土した出土米ブロックは、文化財であるため、原則として破壊による分析・調査を行うことができません。しかしながら、X線CTスキャンを行うことで、ブロック内部の構造を視覚的にとらえることが可能になり、ブロック内に含まれている炭化米の籾形状を数値化することができるようになります。また、保存状態がよいものでは、ジャポニカ米、インディカ米、熱帯ジャポニカ米といった籾形状による判別ばかりでなく、枝梗の有無や脱粒程度などを観察することができるものもあります。これらを手掛かりとして、弥生時代における稲作での生産力の推定を試みています。



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